「デジタル封建社会」の正体

令和の時代に忍び寄る「封建社会」

「封建社会」と聞くと、多くの人は歴史の教科書や、時代劇の世界を思い浮かべるかもしれません。一言でいえば、それは「お殿様が一番エラくて、その領地の全てを支配している社会」です。

お殿様は領民に「ここで暮らしていいぞ、敵からも守ってやる」という安心感(領地)を与える代わりに、領民からガッツリ年貢(税金)を徴収します。領民はお殿様の決めたルールに絶対服従。逆らえばその土地から追い出され、生きていくことすらできなくなります。つまり、「特定のボスに生殺与奪の権を握られた、逃げ場のない社会」です。

「そんな大昔の不自由な社会、今の民主主義や自由資本主義の時代に関係ないじゃないか」と思うでしょうか。いいえ、実は私たちは今、形を変えた新しいお殿様たちに、文字通り「支配」されようとしています。それが、IT大富豪たちが支配する「デジタル封建社会」の到来です。

現代のお殿様は「シリコンバレー」にいる

かつてのお殿様が支配していたのは「土地」でしたが、現代のデジタルお殿様が支配するのは「プラットフォーム(ネット上の経済圏)」です。

例えば、イーロン・マスクやピーター・ティールといったIT大富豪たちを思い浮かべてみてください。彼らは「この便利なSNSを使いなよ」「このデジタル通貨なら安心だよ」と、私たちに快適な城(プラットフォーム)を提供してくれます。

私たちはタダや安価でその城に入り、商売をしたり、友達と話したりして暮らします。しかし、気づけば彼らの作ったルール、彼らの発行するデジタル通貨(ステーブルコイン)なしでは、1日も生活できなくなっている。これこそが、現代の「領地」です。

デジタル封建社会の構図

  • お殿様(領主):イーロン・マスクなどの巨大IT企業のトップ
  • 領地(城):SNS、ECサイト、独自のデジタル通貨決済圏
  • 領民(農民):プラットフォームに依存して生活・商売をする私たち

「お気に召さない奴は、即・追放」の恐怖

もし、あなたがこのデジタルお殿様の機嫌を損ねたらどうなるでしょうか。

「お前の意見は気に入らないから、アカウントを凍結する」 「お前の商売は我が社の利益に反するから、決済システムを使わせない」

お殿様の一言(アルゴリズムの変更やシャドウバン)で、あなたの発言権や、昨日まで稼げていた売上は一瞬でゼロになります。国が守ってくれる法律や裁判なんて関係ありません。お殿様の決めた「規約」こそが、その領地の絶対的な法律だからです。

これまでは「国家」が一番上で、私たちが納める税金によって社会のルールが守られていました。しかし、国の紙幣(円やドル)の信用が落ち、IT大富豪のデジタル通貨が世界を牛耳るようになれば、国境の意味は薄れます。私たちは日本の総理大臣ではなく、「自分がどのお殿様(IT企業)の城に所属するか」で生きる時代になるのです。

便利さの裏側で、私たちは知らず知らずのうちに、新しいお殿様に年貢を納め、生殺与奪の権を差し出しているのかもしれません。デジタル封建社会の足音は、もうすぐそこまで聞こえています。